東芝事件の思い出(1)


かなり昔のことではあるが、日本のネット事情の分水嶺となった事件について、マスコミのことと、掲示板のことについてなど、ちょっと(で済めばいいが)書いてみる。
以前のエントリーの続きでもある。

まず基本的な情報

リンク先はほとんど無くなっているけれど、当時の掲示板の盛り上がりと荒らしが時系列で忍ばれる。

  • 音声ファイルが見つからない人は「東芝暴言REMIX」とググると見つかるかもしれない。

マスコミ・弁護士・掲示板のこととか


マスコミ報道は、この事件以前でもネットに関しては、不正確で批判的な論調が主流だった。 「変な人が何かわからないが変なことをやっている」程度ならばまだいい方で、犯罪の温床という論調の方が多かった。
しかし、この事件に関してはマスコミは東芝に批判的、告発者に好意的だった。 紀藤正樹弁護士のところや、wikipediaにも記録れてる通り。

一方、解決の見えない要求を続ける同ユーザーに対する非難も多く寄せられたが、最初はユーザーに好意的な報道を行ったマスメディアがほとんどで、ユーザーに批判的な報道を行ったのは週刊文春のみであった。
(wikipedia)


ネット内では、市民運動系の注目が高かったのではないかな。 東芝側が告発ウェブページの一部差止を求める仮処分を申し立てたこと対しての反発は、表現規制反対運動の立場からのものが強かったという印象がある。


そういった空気のなかで牧野二郎弁護士のスタンドプレーがあった。

東芝に対し、節度ある行動をとることを求める。 1999年 7月16日 インターネット弁護士協議会 代表 牧野二郎
http://www.ilc.gr.jp/toshibavtr/video1.htm
「インターネット利用者は、既に何が真実かを明確に見抜いているのである。」

今読むと、なんとお気楽で素朴なネット信仰というか…
これに対して、かなり批判が寄せられて、すぐに弁解するハメになった。


ご質問 ご意見に対する見解 http://www.ilc.gr.jp/toshibavtr/1.htm

「インターネット弁護士協議会」というのが、アテにならない組織だということが露呈しちゃった…



当時、紀藤正樹弁護士がこんな事を書いたりもする。

「検証 もはや!第5の権力 [ネット世論]の 可能性と 危険性」
東芝VSクレームHP」騒動で明らかになったネットの"威力"。ウェブが「司法・立法・行政・マスコミ」に次ぐ権力に?
http://www.fusosha.co.jp/spapage/1999/spa2653.html

事件後にネット世論が第5の権力に成長したかというと…、かなり奇妙なねじれが生じちゃったなぁ、という感慨がある。



個人が、批判殺到するウェッブサイト・掲示板・コメント欄を維持するのは難しい、ということが明らかになった事件でもあった。
特に、掲示板荒らし・潰しが表に浮上してしまった感がある。 


当時、事件の一方の極だった「悪マニ」は、爆発しつつある議論を擁護派・批判派・中立派という掲示板を建てることで、なんとか対応していた。 しかし、東芝の仮処分申し立て・謝罪という微妙な時期に、掲示板が荒らしによって混乱することになったのは、かなり問題だったと思う。
後に専用ブラウザと認証制の掲示板に移行したが、東芝の謝罪後ということもあり、参加者は減り、議論もやや低調になってしまった。


teacupを始め、いろんなレンタル掲示板サービスで議論も続けられていたが、参加者が少ないなら少ないなりの、議論爆発や炎上や荒らしが有ればそれなりにと、とにかく掲示板は大変だということが露わになった。


私は、東芝事件以前、または事件がマスコミで好意的に取り上げられている間は、これからのネットはホームページ+掲示板という形で推移するのじゃないかと思っていた。 「悪マニ」は、その中のひとつのロールモデルとなるのかな、と。


現在、それに近いようなイメージのサイトといえば…
「元検弁護士のつぶやき」 http://www.yabelab.net/blog/
の中の医療崩壊問題のエントリーかなぁ。


この手のサイトがあちこちに出来て、ネット世論を主導するのかと思ったら… 2ちゃんねるの時代になってしまった。