福沢諭吉とアルビン・トフラーと立花隆を足して、水で薄めた様な『ウェブ時代をゆく』

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)
梅田氏の新書で、最後まで読み終えた最初の本。 「ウェブ進化論」や対談本は、結局まだ読了していない。

印象としては立花隆が2000年頃に書いていたインターネット論と似たような印象。
著者の知り合いの話と、シリコンバレー情報と、「ネットの成功者」というか著者が「ロールモデル」にしたいと考えている人たちの紹介と、「私の体験もロールモデルのひとつ」という感じの本だな。


立花隆には、いちおう「知の巨人」とかいう形容詞はつくけれども、梅田氏に関しては…



何度も言及される福沢諭吉の言葉「一身にして二生を経る」に苦笑い。 著者に関しては「日本を飛び出してシリコンバレー精神を煽る人」という印象があったのだけれど、結局は典型的な海外帰国組評論家なんだな。


改めて、日本人は「維新」が大好きなんだなぁ、と思う。
226事件昭和維新だったし、ミスター年金長妻昭氏は1995年の参議院選挙に評論家の大前研一氏が設立した「平成維新の会」公認で出馬してたりする。(この時は落選)
いまでも民主党には松下政経塾出身者を中心とした「志士の会」があるし、与党側にも古賀・麻生・平沼の「志士の会」が有ったりする。



それにしても、ネットに関係ない人にとっても20世紀というか昭和には「一身にして二生を経る」人たちがたくさんいるだろうに。
戦争と産業構造の変化と、技術革新で波瀾万丈な時代だった。
たとえばカネボウ(現クラシエホールディングス)の歴史とか見ると、目眩がする。 重厚長大から軽薄短小へとか、いろいろあるしなぁ。 *1
TV業界も新しい産業で、娯楽から文化・政治まで大きな変化をもたらしており、TV業界の創世記から活躍している人こそ「一身にして二生を経る」という思いがあるだろうし、自分たちこそが世の中を変えたという実感を持っているはず。



カバーの折り返しに『リアリズムに裏打ちされた、待望の仕事論・人生論』とある。
んん……、リアリズムと言うより著者や著者の周辺にいた「成功者」の話ばかりだった。
シリコンバレーで起業し、「失敗・敗北」した人の話を読みたかった。 有る程度いいところまで行きそうになるが、マイクロソフトが同じ分野に乗り込んできたため撤退を余儀なくされたベンチャー企業の話とか、その後の彼らの「敗者復活戦」奮闘記とか。


池田信夫 blog
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/c3fd47bcbacc477d63e978c9ad7f04ce
おまけに「リーダーシップ」だとか「ロールモデル」だとかいうありきたりな人生論が多く、ほとんど江原啓之化している。

ロールモデル」と「前世」ってのは、確かに似たようなものじゃないか? という印象はあるな。



イメージとしては、PHPビジネス新書として出版されるべき本のように思えた。

*1: その他「プロジェクトX」の産業界の話とか