オバマ演説誤訳騒動

なんで今頃になって? という感じのニュース

「米中最重要」オバマ演説は誤訳?外務省批判

 外務省の児玉和夫報道官は4日の記者会見で、オバマ米大統領の米中関係の演説を巡り、「米中関係が最も重要と話したとの報道は不正確だ」と指摘した。


 問題となったのは、先月27日にワシントンで開かれた「米中戦略・経済対話」での大統領演説。「『米中関係が世界のどの2国間関係より重要だ』と述べた」などと日本の一部メディアで報道されたが、外務省が在京米大使館に確認したところ、大統領は「どの2国間関係にも劣らないほど重要だ」と述べていたことがわかったという。

 児玉氏は「訳が間違っている」と批判した。
(2009年8月4日21時07分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090804-OYT1T00926.htm

この問題は28日頃から、けっこう話題になっていたはず。


問題の部分

And we also know this: The relationship between the United States and China will shape the 21st century, which makes it as important as any bilateral relationship in the world.


http://www.whitehouse.gov/blog/A-Dialogue-with-China/

5分頃に問題の発言


「より重要」派

共同通信

【ワシントン共同】米国と中国が外交・経済分野の問題を閣僚級で話し合う「米中戦略・経済対話」の初会合が27日、ワシントンで始まった。開幕式に出席したオバマ米大統領は「米中両国間の関係が、21世紀を形づくる。世界中のどの2国間関係よりも重要だ」とあいさつし…(後略)


産経新聞

【ワシントン=山本秀也】米中両政府による初の包括的な戦略経済対話が27日、ワシントンで開幕した。冒頭、オバマ米大統領は「米中関係が世界のどの2国間関係より重要だ」と述べ、突出した対中重視の姿勢を表明した。


サーチシナ

 7月27、28日ワシントンで開かれた米中戦略経済対話の冒頭、オバマ米大統領孟子「盡心(じんしん)章」の言葉を引用して米中両国間の対話強化を訴えると同時に「米中関係が21世紀を作ってゆくだろう」し「米中関係が世界で最も重要な二国関係だ」と断言しました。これはもう外交的リップ・サービスの範疇を超えています。韓国のハンギョレ新聞は「アメリカはこの間、日本などの憂慮を考慮してこのような表現を自制してきたが、もはや中国がアメリカの外交と世界戦略において最も重要な位置を占めるようになったことを隠さなかった」と、やや驚きをこめて伝えています。
(執筆者:鄭雅英 立命館大学准教授)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090803-00000101-scn-int


テレビでよく見る青山繁晴氏も「より重要派」
blogのコメントに答えて、こう述べている

 ところがオバマさんはまず、米中の2国間関係が、21世紀を形作る、すなわち21世紀は米中2国が仕切る世界だという趣旨を明言したうえで、which makes it つまり、その事実あるいは確定的な予測こそが、米中2国間関係を as important as any bilateral relationship in the world にするんだと表現しています。
 したがって、「米中2国で21世紀を形作るという事実からして、米中2国間関係は、世界のどの2国間関係よりも重要な2国間関係となる」という意味を汲みとり、そのように訳すことがもっとも適切と考えます。
http://blog.goo.ne.jp/shiaoyama_july/e/e1c60d481c66295caa4cecbcc75aaea4

「劣らず重要」派

日経新聞

【ワシントン=高橋哲史】米中両国の閣僚が一堂に会し、経済や安全保障分野の懸案を議論する初の「戦略・経済対話」が27日、ワシントンで開幕した。オバマ大統領は開会式で「米中関係は世界中のどの2国間関係にも劣らず重要だ」「我々は共に重い責任を負っている」と演説。


ロイター

 「米中両国の関係は21世紀を方向付ける。世界のどの2国間関係にも劣らず重要だ」と指摘。「この現実が米中関係を下支える」と語った

アメリカ大使館では?

http://tokyo.usembassy.gov/tj-main.html

米中両国が戦略・経済対話


  米中戦略・経済対話が7月27日、ワシントンで行われ、クリントン国務長官は、同対話は前向き、協力的かつ包括的な21世紀の米中関係の基礎を築くものである、と述べた。また、オバマ大統領は、戦略・経済対話の開会式で、米中関係は21世紀を形づくり、それは世界のどの2国間関係に劣らず重要である、と語った。

関連文書(英文)
クリントン長官のスピーチ http://www.state.gov/secretary/rm/2009a/july/126521.htm
オバマ大統領のスピーチ・ビデオ・音声ファイル http://www.whitehouse.gov/blog/A-Dialogue-with-China/

この記事の掲載は2009年7月28日となっている。 最初からこの表現だったのか、後から変えたのかは不明ではあるけれど「劣らず重要」という表現である。


青山繁晴氏は自身のblogで、

 つまり、オバマさんは中国に「あんたと2人だけの関係こそが、ほかのどの2国関係、これまでのアメリカが大切にしてきた日本やイギリスとの2国関係よりも、今や大切だと分かっているよ。なんせ、これからは、あんたとふたりで、世界を仕切っていくのだからさ」という重大なニュアンスがちゃんと伝わるようにしながら、同時に、これまでの同盟国、日本やイギリスにもエクスキューズができるように、as as any の構文を上手に使っているのです。

 これは政治家の言葉としては、別段、卑怯とかそういうことではなく、むしろ当たり前です。

と解説しているわけだが…


だけどオバマ大統領は、訪問先の国(トルコ・エジプト・ロシア・チェコ・ガーナ)で常に「あなたの国とアメリカは深い絆で結ばれている」と言っている。
「核軍縮・環境問題・経済危機・テロ対策など、アメリカ一国だけでは対応できない問題にあなたの力が必要だ」と、常に訴え続けていて、この中国への発言自体もその延長線上に有る。
オバマ大統領自身の言葉だけから、米中関係が「劣らず重要」か「より重要」なのかを論じても、あんまり意味はないんじゃないだろうか?


副大統領や国務長官の言葉も分析して、総合的に判断すべき事のような気がするぞ。