もうすこしオバマのプラハ演説について (2) 民主党の主張は?

6月2日参議院外交防衛委員会犬塚直史議員の質問に『東北アジア核兵器地帯条約(案)』というのが出てきた。

外務大臣以下、「理念は素晴らしいが、現実的ではない」という感じだったな。


同日、夕方の鳩山由紀夫代表の記者会見でも、それらしき事が言及されていた。
5日韓国訪問にあたって、韓国首脳と「将来的な北東アジアの非核化の問題などに対して触れていきたい」とのこと。


記者会見より

 −−李大統領との会談で話し合いたいテーマは。また、菅直人代表代行が政権構想に生かすために英国を訪問するそうだが、衆院選まで時間が限られているが政権構想を作り上げるまでのスケジュール感は。さらに、政権構想作りでの菅氏と鳩山氏の役割分担は。代表としてどのようにコントロールするか


 「はい。訪韓李明博大統領と何を意見交換したいかと。まず一番意見交換したいのは、北朝鮮に対して非核化を迫っていくと。そのための日韓の協力を求めていきたいと思っております。それ以外のテーマに関しては、これは時間の関係で優先順位を考えながら議論して参りたいと思っております」


 「やっぱり最初は、北朝鮮が核実験を行い、ミサイルを発射する、という大変厳しい状況にありますので、この問題についてしっかりと議論して参りたいし、将来的な北東アジアの非核化の問題などに対して触れていきたいと、自分としては考えております」
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090602/stt0906022037008-n4.htm


民主党は、北朝鮮の核実験後もこの路線でいくつもりらしい。
どんな構想かといえば

東北アジア核兵器地帯条約(案)について http://www.katsuya.net/upload/pdf/joyaku.pdf (PDF)


・ 本条約(案)の基本的枠組みとしては、韓国、北朝鮮、日本の3
 カ国(地帯内国家)が非核兵器地帯条約を締結するとともに、周
 辺の3つの核兵器国である米国、ロシア、中国の3 カ国(近隣核
 兵器国)が、核攻撃をしないという意味での「消極的な安全の保
 証」などを含む非核兵器地帯尊重の議定書に参加するという方式、
 すなわち、スリー・プラス・スリーの形式をとる。


・ 本条約によって東北アジアに非核兵器地帯を創設し、先に存在す
 る非核地帯条約とあわせ、世界中が非核地帯となることを希求す
 るものであり、将来的には、一つの条約に統合されることを目指
 したい。


・ なお、6者協議において、北朝鮮の核施設の無能力化、解体が協
 議されているが、その完遂が北朝鮮による条約批准の当然の前提
 となる。また、本条約が発効した場合でも、いずれかの締結国が
 いずれか他の締約国に対し核兵器の使用をした場合には、「条約
 に関するウィーン条約」に従い、本条約は無効になる。


6カ国協議のメンバーで話し合って、日本がリーダーシップを取って実現を目指す、ということらしい。
それにしても…
北朝鮮の核施設の無能力化・解体の完遂が当然の前提」という条約ってのは、すごいな。


この構想は、岡田克也が中心となっている「民主党軍縮促進議員連盟」が作ったものらしい。


「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」*1と共同歩調をとるようなことも言ってはいるのだが…


社民党公明党も、この案をお気に入りらしいが…


鳩山代表は、1日に「実効性」ということを述べているんだけれど、どんなものかな?

民主・鳩山氏、北制裁で「ポイントは実効性」米国務副長官と会談 2009.6.1 19:33
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090601/stt0906011934008-n1.htm

 民主党鳩山由紀夫代表は1日、党本部でスタインバーグ米国務副長官らと会談し、北朝鮮の核実験実施に伴う制裁措置について「ポイントは実効性があるかどうかだ。中国を協力関係に導くことが重要だ」と指摘した。
 スタインバーグ氏は「北朝鮮の(核開発)能力が上昇していることを踏まえ、関係国が説得し、朝鮮半島の非核化に導くことが重要だ」と応じた。


この時期に「東北アジア核兵器地帯条約(案)」を韓国で論じるつもりなんだろうかなぁ?


民主党は「北朝鮮核廃絶を迫るためには米中露に核先制不使用を認めさせろ!」ということを、この間まで主張していたが…
乗ってくる国があるんだろうか?


北朝鮮の核施設の無能力化・解体の完遂」が実現したとしても、米国・ロシア・中国が乗れる話なのか??


いずれにせよ、現在の6カ国協議で議論する話ではないように思えるが…。



その他、民主党ネクスト防衛副大臣 山口壮の場合

北朝鮮による核実験、日本は自前の察知手段を整えるべき
http://www.mission21.gr.jp/yamaguchi/2009/05/post-39.html

日本は自前の察知手段(衛星等を含むがそれに限らず、高度な情報活動)を整えなければならない。これは、長年言われているが遅々としてあまり進んでいない。

日本は、敵地攻撃手段を持とうという方向に進むのではなく、事態を未然にどう防ぐかに智慧を集中すべきだと思う。

今回、外務省はそれら情報手段を持ち合わせていないから、もちろん事前に知らなかった。

しかし、民主党政権は、それを根本的に発想を改め、アメリカ頼みの情報活動ではなく、自前の情報がもてるよう、そしてそれを活用できるように作り変える。

今回、アメリカから事前に連絡があれば、未然に防げたわけではないが、この問題は、日米で「同盟」と言われている関係の実態について、極めて大きな疑問点を投げかけるものだ。

かなり早い段階で察知できるようであれば、中国やロシアとも、深いやり取りができる。

麻生外交では無理だ。

私にはできる。

中国に、北朝鮮が核実験をした場合、それにどう対処するのかを、自前の情報を基に事前に問いただすだけでも、状況は全然異なってくる。

もちろん、もっと詳細なやり取りができる。

私にはできる。   かぁ  オバマのまね??


力強い言葉ではあるが、具体的な根拠がある話なのか。 各国要人と個人的パイプがあるのだろうかなぁ?
彼は、現在はロケット開発に積極的だということくらいしか分からんけれど。



【追記】読売新聞社

うーむ、なんか似たようなことを書かれてしまったかも

延長国会 衆院選へ実のある政策論戦を(6月3日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090603-OYT1T00001.htm
 安全保障政策も、もっと具体論に踏み込んだ議論が必要だ。

 例えば、民主党の岡田幹事長は朝鮮半島と日本を「非核兵器地帯」とする条約を提唱している。米国に核の先制不使用を求め、条約が実現すれば「日本は米国の核の傘から出ることになる」という。

 北朝鮮の核放棄が前提だともいうが、相手は核拡散防止条約まで反故(ほご)にした国だ。条約を唱えるだけでは核の脅威は解消しない。

 しかも、中国とロシアは核を保有したままだ。中国のミサイルは日本にも照準を合わせている。米国の「核の傘」から日本が一方的に脱して、日本の平和と安全が本当に保てるだろうか。

 首相と鳩山代表による党首討論などを通じ、これらの主張の違いが明確になれば、それが衆院選の争点にもなるだろう。

*1:ラッド豪首相が2008年6月に訪日した際に提案したもの。(1995年に豪が主催したキャンベラ委員会及び98年に我が国が主催した東京フォーラムと類似のものが念頭。)。同年7月9日の福田総理(当時)とラッド豪首相の間で、日豪共同イニシアティブとして立ち上げることが合意され、共同議長として川口順子元外務大臣とギャレス・エバンス元豪外相が任命された。