毎日新聞専門編集委員・山田孝男のコラムが酷すぎる

この人はオバマプラハ演説をちゃんと読んでもいないし、海外ニュースも目を通していないのではないか?
このコラムが5月20日から5月25日までに掲載されていたら、ただ冷笑すればいいところだけど、6月1日付でこれでは、あまりに情けない。


しかも志位委員長を持ち上げるために、精一杯ヨイショ記事を書こうとしているのだろうけれど、これでは志位委員長の真意さえねじ曲げているとしか思えない。


だいたい、こんなまとめは、あまりに不正確だ。

 「それでは核抑止という考え方自体を否定したオバマ演説と相いれない」と見る志位は、米側に拡大抑止は求めず、言葉を選びながら、核拡散防止条約(NPT)体制が揺らいでいる責任は核廃絶の努力義務を負いながらサボってきた核保有国にこそある、と書いた。

オバマの意図も、志位の意図も読み違えている。


毎日新聞は「アメリカよ・新ニッポン論」という連載で、核抑止論を乗り越えた核軍縮を論じていた。
今回のコラムはその延長線上に書かれたモノなのだろう。


しかし5月25日以降、アメリカは「核の傘」を放棄するつもりが無いことを、改めて表明している。


たとえば、5月28日付の聯合ニュース
クリントン国務長官の発言

「自らの孤立深める」米政府が北朝鮮に警告


【ワシントン27日聯合ニュース】米政府は27日、北朝鮮の2回目の核実験実施と寧辺の核再処理施設再稼動の動きに関連し、北朝鮮は自ら孤立を深めこれに相応する対価を払うことになると警告した。特に、クリントン国務長官とギブズ大統領報道官は、北朝鮮が韓国政府の大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)全面参加宣言に反発、軍事的打撃で対応すると威嚇までしたことに対し、こうした断固たる立場を明示した。

 クリントン長官は同日の記者会見で、北朝鮮は国連安全保障理事会の決議に違反し、国際社会の警告を無視し6カ国協議での約束を破棄することを選択したと述べ「こうした行動には相応の結果が伴う」と警告した。その上で、北朝鮮6カ国協議への復帰を促した。また、北朝鮮が核で威嚇している状況において、米国は韓国や日本との防衛公約を確固として履行すると表明し、核の傘」提供方針に変わりがないことを強調した。

 一方、ギブズ報道官も定例会見で、北朝鮮が威嚇とやっかい事で注目を浴びようとしているが、威嚇では自身が「渇望」する関心を引き出せないと指摘した。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2009/05/28/0300000000AJP20090528000300882.HTML


5月31日 ゲーツ国防長官の発言

韓米が国防相会談、「北朝鮮の挑発に断固対処」


シンガポール30日聯合ニュース】韓米の国防相が30日に会談し、2012年4月17日付を予定する戦時作戦統制権の転換時期を再確認するとともに、北朝鮮の軍事的脅威を注視しながら進行状況を点検することにした。
 国防部によると、李相憙(イ・サンヒ)長官と米国のゲーツ国防長官はアジア安全保障会議が開催されているシンガポールで国防相会談を行い、核実験など北朝鮮の一連の挑発状況に対する評価と対策熟議の上でこうした立場をまとめた。

る作戦統制権転換延期の主張についてゲーツ長官に説明しながら、「朝鮮半島防衛公約と有事の際の増員戦力提供、在韓米軍の現水準維持、核の傘を軍事戦略的次元で具体化した拡張抑制力提供、などに対する米国の確固たる約束が必要」と強調した。これに対しゲーツ長官は、朝鮮半島安保に向け、拡張抑制力の提供を含む4つの既存の約束を必ず守る立場を明らかにした。また、オバマ米大統領からの「米国の軍事力と核の傘は韓国を保護できるほど拡張されており、また、確固としている」というメッセージを李長官に伝えたという。
(略)
http://www.wowkorea.jp/news/Korea/2009/0531/10058008.html


このコラムを6月1日付で紙面に載せ、しかも英訳してwebに公開するという神経が信じられないぞ。



風知草:麻生の手紙、志位の手紙=専門編集委員山田孝男
http://mainichi.jp/select/seiji/fuchisou/news/20090601ddm002070100000c.html
 「すげえ話だ」

 「どの辺が?」

 「だって、核兵器を持ってる国が捨てると言ったんだからこれは、すげえ話よ」

    ×  ×  ×

 オバマ米大統領核兵器廃絶演説をめぐる麻生太郎首相と志位和夫共産党委員長の対話(5月20日)である。15分間の党首会談。もちろん、「すげえ」を連発したのが首相だ。

 いかにも、オバマ演説(4月5日、プラハ)は歴史的だった。最大の核保有国の指導者でありながら「核兵器のない世界をめざす」と誓った。そのために行動することが、広島、長崎に原爆を落とした米国の「道義的責任」だと言った。

 志位が4月28日付でオバマに称賛の手紙を送ったところ、5月5日付で返書(デイビス国務次官補代理の代筆)が来た。大統領の謝意に続いて「日本政府との協力を望む」とあり、それを麻生に伝えた。

 実は麻生も演説を聞いてオバマに親書を送っていた。こちらは4月15日付。非公表だが、本紙報道によれば、核兵器の廃絶宣言を支持しつつ、「日米安保体制の下における核抑止力を含む拡大抑止は重要」だとクギを刺したという。

 拡大抑止とは、強国が自国だけではなく、同盟国の防衛にもにらみを利かせること。「いざとなったら『核の傘』で守ってくださいよ」と麻生は大統領に念押しした。中曽根弘文外相の軍縮演説(4月27日)にも同じ表現が出てくる。

 「それでは核抑止という考え方自体を否定したオバマ演説と相いれない」と見る志位は、米側に拡大抑止は求めず、言葉を選びながら、核拡散防止条約(NPT)体制が揺らいでいる責任は核廃絶の努力義務を負いながらサボってきた核保有国にこそある、と書いた。

 この手紙の作成に志位はエネルギーを集中した。パソコンで推敲(すいこう)を重ね、一度書き上げて破り捨て、半徹夜で400字詰め原稿用紙にして7枚の原文を仕上げた。英訳し、共産党委員長として初めて在日米大使館に乗り込み、ズムワルト臨時代理大使に手渡している。

 東京の麻生・志位会談と同じころ、オバマは、ホワイトハウスキッシンジャー、シュルツ(ともに共和党政権の元国務長官)、ペリー(民主党政権の元国防長官)、ナン(元上院軍事委員長、民主党)の4人を招き、意見交換していた(現地時間5月19日)。

 かつて「力の均衡」に基づく核戦略の中枢にいたこの4人は、米ウォールストリート・ジャーナル紙の連名の寄稿(07年1月4日付と08年1月15日付)で「抑止力の有効性は低下する一方で、核廃絶しかない」と訴え、反響を呼んでいた。

 オバマ超党派の大物4人の連携は、外務省のある幹部に言わせれば「自民、民主の大連立並みの衝撃」。別の幹部は「核兵器に依存しない新しいパワーストラクチャー(国際間の権力構造)を生み出すチャンスだが、我々は核政策について掘り下げて考えた経験がなく、準備がない」と指摘した。

 手紙を出して記者会見、返事をもらってまた会見という張り切りようで「はしゃぎ過ぎ」とからかわれている志位だが、戦略不在の空白を突いた鋭い切り込みだったと思う。

 ワシントンと世界の新潮流が戦後の日本の常識を超え、なかなか「すげえ」ことになった。どうするのか。政治の構想力が問われている。(敬称略)(毎週月曜日掲載)