もうすこしオバマのプラハ演説について【資料】 日本の国会での言及 (1)

衆議院安全保障委員会 2009年4月23日


日本共産党 笠井亮議員の質疑 
田中明彦参考人森本敏参考人の回答
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001517120090423006.htm#p_honbun


○笠井委員 最後の質問ということで、お二人に伺いたいと思うんです。


 私も振り返ってみますと、お二人の参考人に最初に国会で質問をさせていただいたのが一九九七年で、ちょうど今ごろだったんですけれども、当時、参議院の国際問題調査会で機会がありまして、それぞれに伺ったんですが、あのときは、二十一世紀を前にしてということで、アジア太平洋の安全保障と日米同盟、それからガイドラインの見直しということで、大いに議論があったときでありました。


 あれから十二年たって、世界はある意味で大きく変化していると思うんですが、きょうのテーマにもかかわって、大前提の問題としてお二人に伺っておきたいと思っているのが二点あります。


 一つは、アメリカのオバマ政権が、欧州や米州でいいますと、米州各国との関係では、この間も目に見える変化ということを我々も目の当たりにする一方で、日本との関係でいいますと、従来を踏襲するというようにも言われておりますけれども、オバマ政権のアジア太平洋政策について、今後どうなっていくというふうに見ておられるか。これは、お話しいただくとそれぞれ一時間とかになっちゃうと思うんですが、端的に一言ずつということが一点。


 もう一つは、オバマ大統領が四月五日にプラハで演説をして、米国が核兵器のない世界の実現を追求することを宣言して、核兵器を使用したことのある唯一の核兵器保有国として米国は行動する道義的責任があるということで世界に協力を呼びかけました。私も大いに歓迎しているんですけれども、今こそ、唯一の被爆国としての日本の役割、イニシアチブを核兵器廃絶という点では発揮すべきだと思いますが、今回のオバマ発言について、両参考人の受けとめというか御感想を伺えればと。


 この二点、それぞれ端的にお願いします。


○田中参考人 オバマ政権のアジア政策でありますけれども、私は、オバマ政権が今後も日本との関係を非常に重視していくものだというふうに思っております。


 ただ、日本との関係を重視するとともに、やはりこれは、現実、今の金融危機からの克服、それからその後の世界、アジアの展望を考える場合、アメリカが中国との関係を大変重視するということもまた間違いないことだと思います。


 しかしながら、今のオバマ政権の中の重要人物は、やはり日本人は我々の友達であるというふうに思っている。ですから、この友達である日本とともに、非常に大事なパートナーである中国との関係をどう築いていくかということがオバマ政権の課題だと私は思っておりますし、日本もまた、アメリカは重要な友人であるから、重要な友人であるアメリカとともに重要なパートナーである中国との関係を築いていく、こういう形でなければいけないと思います。


 オバマさんがプラハ核兵器のない世界を言ったというのは、やはり私は、この大統領の非常なある種の特徴を示していると思います。彼は、具体的な策になると比較的慎重です。実現できそうもないようなことを、具体的に短期のことでこれをやるあれをやるという安受け合いをしない人です。それから、国民に負担も求めるというタイプの人ですが、やはりその背景に非常に長期的なビジョンを語るというところがあって、まさにこの核兵器のない世界というのは、今のアメリカが長期のビジョンを掲げるといったときに一つのあり方だと思っております。


 私自身、直ちに核兵器のない世界が実現するとは、国際政治の分析をしている者からすれば思いませんが、ただ、やはり、アメリカが世界をリードしていくときに、ある種の目標を掲げてやっていくことに日本が協力していくということは当然でしょうし、日本にとって核兵器が削減されるということが望ましいことは、これは間違いないことだと思っています。



○森本参考人 オバマ政権のアジア政策はまだ全部出そろっていないと思いますが、一般論としては、やはりアジア政策を進めるときに、日本のような同盟国との関係は依然として重視するという方針に変わりはないのですが、同時に、中国、ロシアとの協調を進めること、それから、まさにクリントン国務長官インドネシアを日本の後に訪問したように、ASEANを中心とする多国間の協力を重視すること、これをどのように組み合わせて今後アジア政策を進めるかということに我々は注目しています。まだアクターが全部そろっていないので、東アジア担当の国務次官補も指名もされていないという状態でもありますので、アジア政策全体を語るのは少し早いのかなというふうに考えます。


 他方、プラハ演説については、私は非常に深い印象を持っています。それは、オバマという人は、余り特定のイデオロギーだとか政治哲学、信条を持たないのですが、この軍縮という分野については既に大統領候補のときから常にこう言っていましたし、この核軍縮の演説はまさに彼の持っている非常に強い核心的な政治信条に近いものなのではないかと思います。


 田中先生がおっしゃるように、すぐにこれが実現できると思いませんが、少なくとも、米ロ関係をリセットして、米ロの軍縮交渉がことし七月から進めば、これを軸に成果があらわれれば、その他の核兵器国をこの交渉に招き入れてグローバルな核軍縮が進むというのであれば、まさにそれは日本がずっと冷戦期を通じてやってきた核軍縮の一つの方向と一致するものであり、日本としては大変歓迎すべき提案でありイニシアチブと考えます。


 他方、安全保障をやっている者は、このように思い切った核軍縮というものが本当に地域の安定と同盟国の安全を確保することになるのかということについて一抹の不安があり、特に、同盟国に対する拡大抑止というものがこういった思い切った核軍縮によってどこまで確保されるのかということについては、まだこれから相当率直に日米間で話し合っていかないといけないのではないか、かように考えております。


 以上でございます。


○笠井委員 ありがとうございました。

 終わります。