もうすこしオバマのプラハ演説について【資料】 日本の国会での言及 (3)

衆議院予算委員会 平成21年5月12日(火曜日) 
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001817120090512027.htm


○上田委員 公明党上田勇でございます。


 麻生総理また与謝野大臣には、連日の予算委員会での御審議、大変御苦労さまでございます。


 質問に入らせていただく前に、先ほど鈴木委員からもお話がありましたけれども、昨日、民主党の小沢代表の辞意表明がございました。補正予算の審議中であって、党首討論も予定されていたというふうに我々は聞いていたのですが、そんな中でありましたので、大変唐突な感を受けました。


 記者会見を私もテレビで見させていただきましたけれども、問題となっている公共事業の受注をめぐる政治と金の問題について全く言及をされず、説明責任は全く果たされていなかったというような印象を受けたところでございます。極めて残念であったということをまず申し上げておきたいというふうに思います。


 それで、時間も限られておりますので質問に入らせていただきますが、まず外交問題についてお伺いをいたします。


 総理には、連休中も中国、ヨーロッパを訪問されて、精力的に外交に御努力をいただいてきたこと、大変御苦労さまでございました。


 総理は、ドイツで行ったスピーチの中で、世界が直面している四つの挑戦の一つに核軍縮大量破壊兵器の不拡散を挙げまして、核軍縮を進め、不拡散体制を強化することが重要です、こういうふうに発言をされておられます。今まさに、米国のオバマ大統領も核軍縮について前向きな姿勢を示す、国際的な機運も高まっている中で、極めて重要な意義のある総理の御発言だったというふうに考えております。また、総理は訪中の際に温家宝総理にも協力を呼びかけられて、一応は賛同が得られたものだというふうに伺っております。


 総理も述べられているように、我が国は唯一の被爆国であり、過去、長年にわたり国連での核廃絶決議を提案するなど、主導的な役割を担ってまいりました。今後の新たな国際社会の秩序への転換が今求められているときであり、安全保障体制の枠組みも新たな局面を迎えているというふうに考えております。そうした中で、我が国がリーダーシップを発揮するべきときであるというふうに、私も総理のスピーチを伺いまして感じたところでございます。


 そこで、改めて麻生総理に、核軍縮、不拡散の前進に向けての御決意、それから、これからの取り組みについてお伺いをしたいというふうに思います。


麻生内閣総理大臣 五月の五日に、ドイツの昔のベルリン大学、今のフンボルト大学という大学で、今、上田先生の御指摘のありましたスピーチをさせていただいております。


 その前の日、プラハというところで日欧会議というのをやらせていただいたんですが、そのプラハにおいて、先月、バラク・オバマ大統領が核軍縮の話をしております。少なくとも、核を使用した唯一の国としての話というのがああいった席で語られたというのを私は過去六十数年間聞いたことがなかったので、たまたま夜中だったんですが、あれは物すごく印象的な演説だったので、非常に記憶に新しいところでもありました。したがって、こういう演説を少なくとも被爆国ではなくて使用国側が言う、核軍縮を核を持っていない方じゃなくて核を持っている方が言うというのはすごく大事なところだ、私はそう思っております。


 したがいまして、私は中国に対しても同じように、いろいろな問題はあるけれども、中国が過去二十一年間、少なくとも軍備というものの歳出が二十一年間連続で二けたで伸びている。しかも、その内容は極めて不透明なものが多いのではないかと。それがあると、少なくとも隣国としてはそれに対して不信感を持つ、中でも核の近代化というものに関してもいろいろということになってくるとさらに不信感が募るというようなことは、今の時代の流れとしてはアメリカですらという話になってきているので、米ロで核軍縮の話をする時代に、少なくとも米中でもこの話はする値打ちがあるのではないかというのが我々から見た意見だというような話もさせていただきました。


 こういった話はなかなか今まで言わないことになっていたんだと思いますが、私は、こういった話がきちんとできるようになったのは、日中関係が今までよりかなり近くなってきているから言えるのであって、話がきちんとしたところで合っていないとなかなかほかの話はしにくいものなんだというのが、普通の人間のつき合いでもそうだと思いますので、今、中国との間でそういったことを言わせていただきました。


 いずれにしても、これまで日本としては、核軍縮に関しては国連で最もこの問題に関して一生懸命やってきた国でありますし、これまで反対の仲間をふやしてきております。加えて、今ここに核の不拡散、拡散という話ができました。少なくとも、核というものがテロリストの手に渡るなどという危険はさらに話を複雑化させますし、思わぬところから被害がということにもなりかねないというのは、これは明らかに安心できない社会であろうと思いますので、そういう意味では、この核軍縮の話につきましては、被爆国だからというだけではなくて、今後、人類が抱えております問題として真剣にもっと考えて取り組んでいくべき問題だと思っております。


○上田委員 ありがとうございます。


 核軍縮、これは基本的には多くの国々が賛同はするものの、やはり具体的な論議になっていくとなかなか容易にはいかない問題だというふうには考えております。


 我が国として同盟関係にありますアメリカの協力がまず必要でありますし、同時に、総理も今回訪中をされて中国への協力も呼びかけられた。また、今はちょうどプーチン首相もお見えになっていますので、また協力も呼びかけていただけるものだというふうに思っておりますが、そういう粘り強い努力が必要であり、総理のここでのリーダーシップをぜひ発揮していただいて、今せっかくここまで世界的な機運が盛り上がっているときでありますので、前進に向けての一層の御努力をお願いしたいというふうに思っております。


 そこで、政府として、この核軍縮に向けて、世界的核軍縮のための十一の条件というものを発表いたしまして、具体的な提言を行っております。


 その中で、明年の早い時期に、我が国が世界的な核軍縮についての国際会議を主催することを提案しております。この国際会議は、今後の核軍縮や不拡散への世界的な取り組みを加速させるという意味で、非常に大きな意義を持つ会議になるのではないかというふうに考えております。それだけに、やはり国際的な関心も高い。だから、実務者レベルではなくて、閣僚級のハイレベルの会議にしなければならないというふうに思います。


 また、NPTに加盟していない核保有国でありますインド、パキスタン、またイスラエル、さらには核開発の意図を持っているイランのような国々にも、できるだけこの国際会議に参加を呼びかけることが我が国として必要だというふうに考えますけれども、そのあたりの御見解を伺いたいというふうに思います。


麻生内閣総理大臣 御指摘のありました、来年、二〇一〇年に企画をしております二〇一〇年核軍縮会議の詳細については目下検討中でありますので、細目を今この段階で申し上げられる段階にはありませんが、少なくとも、核軍縮というものをアメリカが言い始めた今の段階では、世界が一致してやるいい機運、タイミングとしてはいい、私どもはそう思っておりますので、この核軍縮会議というのをぜひ成功に導きたいものだと思っております。


 今、この種の大きな会議というのは、これまで小さいのは幾つかありますけれども、こういった大きなのはやったことが過去ありませんので、そういった意味では、きちんとした形で、関係国とも連携をとりながら成功に導いていきたいと思っております。


 細かくいろいろ詳細はありますけれども、まだそういったものがきちんと詰まっているわけではございませんので、もう少し詰まりましたら、改めてまた御説明させていただければと存じます。


○上田委員 ありがとうございます。


 総理が御提言をされて、我が国の姿勢を世界に示していく絶好の機会になるというふうに思いますので、ぜひその成功に向けて、私たちもできる限りの協力をさせていただきたいというふうに思っておりますし、また、政府一丸となって取り組んでいただければというふうにお願いを申し上げます。



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岡田克也】日本の国のあり方【2009/05/12】
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民主党 岡田克也議員の質問 最後半41分過ぎ



○岡田委員
 限られた時間ですが、核の問題について、先ほども議論が出ておりましたが、少し申し上げたいと思います。


 総理は、オバマ大統領のプラハでの演説について、これまでのアメリカ大統領の演説で最も印象的で極めて重要だというふうに答弁されました。一国のリーダーとしてそういう認識を持っていただいたことは、私、大変うれしく思っております。


 ただ、この核の問題について、では日本はどうするのかという問題があります。もちろん総理は、国連の中で決議を毎年毎年やってきた、それはそのとおりです。しかし、例えば、アメリカが核の先制使用も辞さずとブッシュ政権の時代は言っていました。今もそれを明確には否定していないと思いますけれども、そういったことに対して日本政府は、私はむしろ核の先制使用はやめるべきだと言うべきだと考えますけれども、今までの国会での外務大臣の答弁などを見ておりましても、いや、核の先制使用を否定すると核の抑止が弱くなるから、それは望ましくないという答弁もされています。


 ここのところはどうなんでしょうか。核をなくしていくんだ、減らしていくんだという基本的考え方に立てば、やはり核の先制使用は少なくともやめる、そういった考え方を世界の中で共通の考え方として持つ、その先頭に日本は立つべきじゃありませんか。


麻生内閣総理大臣 これは基本的にはおっしゃるとおりなんですが、現実の今、国際社会の中においては、いまだに核戦力というのを含む大規模な軍事力というものが存在しているという大前提をちょっとまず忘れず、我々は直視せにゃいかぬところだと思っております。


 その上で、核兵器だけを他の兵器と切り離して取り扱おうとしてもこれはちょっと現実的ではありませんので、抑止のバランスを崩すことになりかねませんので、一国の安全保障を考えたときにおいては、これは結構大事なところだと思っております。


 もう一点は、当事国の意図、考え方というものに関しては、これは岡田さん、何の保証もない先制不使用というのは、これは検証の方策が全然ありませんから、言うだけ。うちも先制不使用ですとみんな言うだけで、その方策がありませんので、先制不使用という言葉だけに頼るというのは、安全保障上はこれは十分を期するということにはならないということになろうと思います。


 これを持っておりますのは、アメリカ以外の国、NPT等々に参加していない国というのは幾つかあるので、こういったものも含めて考えにゃいかぬというところが最も難しいところだと思いますが、基本的な流れとしてはそのとおりだと存じます。


○岡田委員 もう終わりますけれども、やはり核兵器というのは特別だからこそ、オバマ大統領もプラハでわざわざ演説をし、そして世界も議論しているわけです。


 例えば、ほかの大量破壊兵器、生物化学兵器については、禁止をするということはもう確立しているわけです。残された核兵器について、少なくとも先制使用は認めない、あるいは、核を持っていない国に対して核兵器を使用することは即違法である、そういう規範をきちんと確立する。日本がリーダーとしてその先頭に立つ。そのぐらいのことがなければ、単にアメリカの大統領がオバマ大統領にかわって、核軍縮あるいは核不拡散に熱心な大統領が出てきたからそれに対して調子を合わせているだけではないかというふうに見られかねない。


 やはり、核の傘にあるといっても、今申し上げたようなことはきちんとできることだというふうに私は申し上げておきたいと思います。


 また引き続き議論したいと思います。ありがとうございました。