1993年のウェブ論『意識通信』

まだインターネットの姿が見えない頃、パソコン通信がメジャーに浮上しつつあった頃、HABITAT*1が有った頃のネット論。 
2002年に文庫化され、現在は絶版。
著者により、全文が無料公開されています http://www.lifestudies.org/jp/ishiki03.htm

目次

Ⅰ メディアの思想

  • 第一章 意識通信

情報通信から意識通信へ/電話と匿名性/断片人格/自己演出/CBとハンドルネーム/パーティーライン/パソコン通信とチャット/自己演出ともうひとりの私/チャットの中の人間関係/コンピュセックス/統合メディアと匿名性/匿名性のコミュニケーション/顔の存在/二世界問題/失われた他者を求めて/註

  • 第二章 匿名性のコミュニティ

都市と雑踏/ファッション街の視線/雑踏と匿名性のコミュニケーション/二つのコミュニティ/ノン・プレイス・コミュニティ/第三のコミュニティ/匿名性とは何か/意識通信と様々な人間関係/註

  • 第三章 意識交流場

コミュニケーション論/シャノン=ウィーヴァー・モデル/意識交流モデルの開発/意識通信モデル五つの要素/交流人格/触手/人格の形態/自己表現/意識交流/意識の流れの様相/構造/意識交流モデル/モデルの意味/註

Ⅱ ドリーム・ナヴィゲイター

  • 第四章 社会の夢

深層意識の活性化/グループメディアの深層/社会の無意識/社会の夢/夢の作業/ドリーム・ナヴィゲイター/ホスト介入型グループメディアの進化/註

  • 第五章 意識交流の深層へ

ホスト介入型グループメディアの構造/統合メディアへの展開/意識をデザインする/匿名デザイン通信/ドリーム・ナヴィゲイターの旅

  • あとがき

前半Ⅰ部の内容を懐かしいと感じるか、今とたいして変わらないと思うかは、いささか微妙かもな。
1993年当時の記録としては、いまや貴重な「歴史的証言」という気もする。


前半Ⅰ部の匿名性・断片人格・自己演出を巡る考察は、現在も再読に堪える考察だ。
「意識通信」という言葉がやや微妙だけど。
後半Ⅱ部に入ると、かなりヤバイ。


この頃のコミュニケーション論としては「シャノン=ウィーヴァー・モデル」くらいしか無かったかもなぁ。 
その後、いろんな理論が発表されていくわけだが……結局日本からはまともなコミュニケーション論は出てこなかったのだなぁ、ということが再確認できる本かもしれない。

普通の社会学的なアプローチではなく、「ドリーム・ナヴィゲイター」という思考実験というかSFのプロットではなぁ……


普通に書籍や雑誌の行方とか、ラジオ・テレビなどのメディアの行方のほうの考察に向かわずに、いきなり「意識通信」という方向にぶっ飛ぶってのは、なぜなんだろうかなぁ。
1993年という時代の雰囲気なのか?? 出版当時から「と」扱いだったみたいだけど。

*1:セカンドライフの先祖?  Habitat記念サイト   http://www.j-chat.net/habitat/