【書評】僕の叔父さん 網野善彦 (集英社新書)

網野善彦氏追悼のため書き始めたら、自身の歴史観、個人史、網野論について述べる本になってしまったらしい。

僕の叔父さん 網野善彦 (集英社新書)

僕の叔父さん 網野善彦 (集英社新書)

中沢新一が「コミュニストの子供」というのが、ちょっと意外だった。 以前に何処かの対談で、キリスト教の家庭で育ったようなことを言っていた記憶があった。 どちらも本当ではあるのだが、これほどまでに「コミュニスト」というのを強調してるのを見て、へ〜と思ったな。


網野氏は晩年「新しい歴史教科書を作る会」と対立していたせいか、コミュニストが原点にあると言うことを強調しているのかな、とも感じる。


網野史観については、後深草院二条 さんのサイトhttp://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/index.htm が詳しい。


「右」からの批判だけではなく、「民衆」というか「悪党」を強調しすぎではないか、という批判が有ったということも、いちおう忘れるべきではないだろう。

網野善彦 「後醍醐」 (『中世的世界とは何だろうか』朝日選書.1996年.p71以下)
http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/just-amino-godaigo.htm

それに対する批判の一例。「(今谷明氏『室町の王権』」
http://www015.upp.so-net.ne.jp/gofukakusa/just-imatani-muromachino-ouken.htm

網野史観の功罪

それまでの、いわゆる左の人の描く搾取されて悲惨な農民というのを、解体したことかな。
漫画でいえば、カムイ外伝の世界。

しかし宮崎駿の「もののけ姫 [DVD]」にまで行き着いてしまうと、なんだかなぁとは思う。

中沢新一は、そのうち「太平記」外伝を書いちゃうのではないか?

邪宗門」的なものをいつか書くような話があったけれど、それよりも「太平記」を書いちゃうのではないかな、なんていう妄想が広がる本でもあった。
1968年1月17日、米原子力空母エンタープライズ佐世保寄港阻止阻止闘争で、デモ隊が機動隊に投石で対抗している映像から、中世の「悪党」へと想いを巡らすあたりが興味深い。
後醍醐天皇密教的な面や、「悪党」である楠木正成との繋がりへの注目など、なんか思い入れが感じられる。


建武の新政も、1970年前後の政治運動も、政治的には敗北・崩壊しているわけだが……精神的には連続性がある、そして後世に何かを残したということ、かなぁ??



ゴシップ的な話題も、ちょっと混ぜてる。 K代議士のT醸造は、芋からワインを作ってるみたいな話。 wikipediaにも載っていた。
これは金丸信と太平醸造の話、現在のサントネージュワイン株式会社のことのようだ。
http://www.asahibeer.co.jp/enjoy/wine/ste-neige/ste_history.html
天皇巡幸のことも、しっかり社史に載っているなぁ。