鳩山由紀夫のブーメラン 1998年(平成10年)版

衆議院会議録情報 第142回国会 予算委員会 第12号(平成10年2月24日)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/142/0018/14202240018012a.html


○鳩山(由)委員  私は、沖縄の米軍基地の問題で、総理が御努力をされて普天間基地の返還にこぎつけられたときは、大変に喜びました。そして、それが現実のものになるように期待をいたしているところでございます。
 ただ、名護市沖の海上ヘリポートにあくまでこだわっていかれるのか、あるいは、それ以外の選択肢というものをいま一度白紙になってお考えになられるお気持ちがあるのか、そのことをまずお聞きしたい。


○橋本内閣総理大臣 この問題は、誤解を生じませんように、多少の時間をちょうだいしたいと思います。
 まず、原点として申し上げたいこと、それは、私が総理になりました直後に大田知事と最初にお目にかかりましたとき、知事から、従来沖縄県として非常に重要視をしておられましたいわゆる三事案というよりももっと急ぐテーマ、市街地の中に存在をし住民の暮らしと隣り合わせている、非常に危険だ、一日も早く動かしてほしいという切々たるお話を承り、それを受けてアメリカ側との返還合意にこぎつけたものでございます。
 そして、そのプロセスにおきまして、政府としては、沖縄県も正式のメンバーで加わっておられる沖縄米軍基地問題協議会、さらに普天間飛行場等の返還に係る諸課題の解決のための作業委員会、それぞれの場におきまして、検討状況などを御説明をし、意見もお尋ねをしながら進めてきたところでありますし、私自身も大田知事と何遍もお目にかかり、この問題について議論をしてきました。
 そして、その中から、代替へリポートについて、さまざまな条件、考えに考え抜きましたあげくに、基地の固定化にならないように移設可能ということ、あるいは騒音、安全、環境、いろんなことを考えた上で、現時点における最良の選択肢としては、現在の普天間飛行場よりもはるかに規模を縮小した、しかも必要がなくなれば撤去できる海上ヘリポートという案を提示いたしました。
 そして、その中で努力をしてまいったつもりでありますし、住民投票の結果も存じておりますが、そうした中で、昨年末、比嘉前名護市長が、国益、県益、市益という言葉を使われたと記憶をしております。熟慮をされた上、大変悩み抜かれた上だと、本当にそう思いましたけれども、受け入れるという決断を示されました。
 他方、その同じ日に大田知事にお目にかかりましたときに、県としては、意見の集約に一月の半ば過ぎまではかかる、中旬ぐらいまではかかる、だから、その後またお目にかかるというお話でありましたけれども、お目にかかる機会のないままに、これは双方の日程の調整がうまくいかなかったということでありますけれども、受け入れ拒否を表明されました。
 しかし、政府としては、普天間飛行場の危険を除去していく、そうした点では、現時点において、私はやはり、海上へリポートという選択肢は、必要がなくなれば撤去できるということを含め、最良の選択肢だと考えております。それだけに、ぜひとも御理解をいただいて、普天間基地の知事の心配された危険というものを一日も早く終結に向かわせたい、心からそう願っております。


○鳩山(由)委員 最善の選択肢である、たとえそれを理解をいたしましても、その最高の選択肢がやはり住民の意思というもので不可能だという結論を出さなければならなくなったときに、私は、次善の策というものも当然考えなければいけないというふうに思います。
 アメリカのキャンベル国防次官補代理も、必ずしも海上案にこだわっておらない、むしろ、どこを選ぶかは日本政府の問題である。当たり前の話でありますが、政府の問題だというふうに言っておられる。にもかかわらず、やはり名護市沖の海上へリポートしかないんだという発想。先ほどの予算の問題もそうなんですが、形式の部分、確かに熱を入れておられるのはわかりますが、それしかないという思いで一点張りで攻めていかれるのではなく、むしろ多方面から考え直していかれるべきときではないか。
 本来ならば、私どもとしては、グアムやハワイ、即応後方配備、海兵隊を行うべきではないかという発想から、海外の問題、そして海外が無理なら、日本の国土、広いわけでありますから、沖縄以外のところに求めるという努力があってしかるべき。それを十分になさらないで、やはり沖縄の中でという発想に結論を見出されて、その中でも海上へリポートに固執されていかれてしまうのは大変に残念であります。むしろ、沖縄の理解というものが得られなければ普天間がそのまま基地として残ってしまう、そのことさえ恐れるわけであります。
 そのように本当になってしまうのですか。そのときには、やはり新たな選択肢をしっかりと考えていかれるのですか。


○橋本内閣総理大臣 どう申し上げたら御理解がいただけるのか大変苦しみますけれども、SACOの最終合意に到達いたしますまでの間に、今御報告も申し上げましたように、県みずからも入っておられる御相談の場で意見も伺いながら、最終報告の取りまとめをしてまいりました。
 その過程において、いろいろな案が検討をされました。その中には、事前に報道をされました結果、計画の検討も終わらないうちに、地域の反対という声で検討を断念いたしましたものもございます。
 さまざまな検討をいたしました中で、最終的に移設可能な海上へリポートという考え方にたどり着きました。そして、その移設可能な海上へリポートというものを、一番、大きく自然環境を破壊することもなく、実用上も問題がなく、環境の上でもプラスの出るような形でつくっていくにはどこかということを考えた上の選択肢をお示しをしたわけでございます。
 それは、議員にもっとよいアイデアがあり、この地域であればという御意見があれば、ぜひ私は承らせていただきたいことであります。政府として、それほど現地の知事さんを初め関係される方々のお気持ちを無視してこの案を固めたわけではございません。


○鳩山(由)委員 せっかくのお話をいただきましたので、ぜひ、これは与党も野党もなく、真剣に議論をしていきたいというふうに思っております。