【書評】『集中講義 日本の現代思想』仲正昌樹著
集中講義! 日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか (NHKブックス)
- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2006/11/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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サブタイトルにある「ポストモダン」について、モダン=近代を日本の論壇はどう考えてきたかというのを軸にまとめている、という印象。
60年代までの階級闘争という問題から、大衆社会・消費社会へテーマが移り、バブル崩壊後の不況時代というのを背景に、最近の傾向までがうまくまとまっている。
ポストモダンへの橋渡しとして吉本隆明「改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)」をあげている。
”自立した理性の主体=市民たちから構成される市民社会”という近代思想の大前提に根本的に疑問を投げかけ、理性中心主義の解体を目指す「ポストモダン思想」への橋渡し的な役割をも担うようになった。(p67)
先駆けとしての栗本慎一郎「パンツをはいたサル―人間は、どういう生物か」 と言われてみれば、そうだったよなぁ。
そして彼は、政治への参加の先駆けでもあるんだな。
金属バット両親撲殺事件時の発言が紹介されている。 反ヒューマニズム的な視点からのもの。 あの頃は、こういう言説は栗本に限らず普通だったけど、おそらく今では許されないだろうな。
Ⅳ章の『「現代思想」の左展開』が興味深い。
ニューアカというのは、既存の論壇やアカデミックな場所よりも、若者向け雑誌とかサブカルチャーの領域での活動・パフォーマンスが目立っていた。 政治とは距離を置いていたという印象がある。
90年代後期からかなぁ、先祖返りなのか地が出たのかわからんが「左展開」というのは、かなり奇妙に感じる。
栗本慎一郎はすっかり電波になってしまっている。 浅田彰・田中康夫の「憂国呆談」も、長野県政や新党日本を見ると、「呆」の字義そのままだ。
著者の仲正昌樹は、それらと比べると、これまた、すごく奇妙ではある。
状況から諸君へかぁ…w
「ニューアカ」という現象は、出版社・編集者などメディアでの仕掛け人の働きもいろいろ有ったのだけれど、そこあたりの考察はバッサリと捨てている。 敢えて、主に「思想」の面に焦点を当てているのだろうな。 メディアのことまで言及していたら、煩雑になってしまっていただろうから。
【追記4/23】
メディアについての言及は少ないけれど、ニューアカ学者文化人の受け入れ先のひとつとして、大学の新設講座があげられている。