麻生発言の真意は

麻生太郎首相が7月25日に語った高齢者に関する発言が波紋を呼んでいる。
しかし、発言趣旨を読んでみると、これまで講演や著作で繰り返し述べてきたことだったりする。


とてつもない日本 (新潮新書)

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第三章 高齢化を讃える
  若さは至上か
  還暦過ぎたジョン・レノン
  老人の労働力

ここを読めば、だいたいの趣旨がわかるはず。



7月25日の発言要旨

首相発言・要旨
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date1&k=2009072500172&rel=y&g=pol

だれか講演の録音か録画を公開しないかなぁ? 自民党広報部か麻生事務所の仕事じゃないか、とも思うんだが。



この発言と、殆ど同じ事を2008年2月17日、伊勢原青年会議所設立30周年記念講演『麻生太郎のこれからの日本』で語っている。
街頭部分だけを抜き出した録音
D

この時の講演では、徳島県勝浦郡上勝町の事例をあげている。
町の人口が2000人ちょっと、45%が65歳以上の典型的な田舎の過疎地だったけれど、「葉っぱ」ビジネスで活気が産まれた経緯を紹介している。
高齢者がパソコンを駆使して、町の特産品「葉っぱ」で大成功。


このビジネスが注目されたのは、麻生氏が総務大臣だった頃。
小泉内閣メールマガジンにも紹介されている。


上勝町株式会社いろどり取締役 横石知二氏の寄稿から一部抜粋

小泉内閣メールマガジン 第185号 2005/04/21
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2005/0421.html

 上勝は人口の45%が65歳以上と高齢化が進んでいますが、高齢者所得
は全国でもトップクラス。80歳で月70万を稼ぐおばあちゃんがいるかと
思えば、売上げ1000万円を目標に日々奮闘している農家もあります。

 この事業でうまくいったことは、高齢者がパソコンを使って販売動向や単
価、自分の売上げ・順位などを見ることができ、注文は瞬時に防災無線を利
用した同報ファックスで流すという独自のシステムをつくり上げたことです。

 おかげで農村特有の保護された環境から脱出し、自らのこととして思考す
る力を高めてきました。当事者になるということがものすごく大事というこ
とがわかりました。この発見は大成功でした。

 また、世の中では福祉の重要性が叫ばれています。産業福祉と名付けたこ
の事業。日本の福祉はいたわりのみでどこか間違っています。人のほんとの
幸せは自分の生き甲斐をもつことであり、それを上勝のおばあちゃん達が教
えてくれています。

 八十歳を超えてもまだ苗木を植え続けるのはなぜと聞いてみると
「人は生き甲斐をもって死ぬまで働らかなあかんなぁ〜」という言葉がとて
も印象的です。

 この地に生まれて良かったと満面の笑みを浮かべるその姿はまさに主役を
演じてくれています。

※ 上勝町「彩」ブランドを支える生産農家の皆さん
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2005/0421a.html

「(高齢者は)働くことしか才能がない」と報じられた発言は、「人は生き甲斐をもって死ぬまで働らかなあかんなぁ〜」を麻生氏なりに表現したモノだろう。


ここあたりの文脈を全く無視して叩くのはいかがなものか、と思わざるを得ない。

野党、首相発言を一斉批判=「高齢者侮辱」「生活見てない」
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%c6%af%a4%af%a4%b7%a4%ab&k=200907/2009072500641

簗瀬進にチャチャチャ

民主党簗瀬進時事通信の報じた要旨を元に、いろいろ茶々をいれているけれど、さらに茶々を入れてみる。



( )内が簗瀬進氏の感想なので、『 』を私の感想にしてみる。



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やなせ進の国会通信 No.831            2009/7/27
http://www2.ezvoice.org/eds/log/eid11009.html
(前略)
●さて、選挙ではネガティブ・キャンペーンは禁物です。私自身も、数多い反省例を
持っています。選挙でまず語るべきは、自らの理想であり、さらには自らの政見であり
、そして実現したい政策であるべきです。このことを、忘れて、対立候補や敵対政党の
批判に終始することは、絶対に避けるべきです。なぜなら、多くの有権者は、何を
行うために選挙に出馬したのを、いの一番に聞きたいと思っているからです。

●しかし、あえて二つの「悲しい暴言」を取り上げさせていただきたいと思います。
それは、麻生さんの高齢者に対する発言と、石森さんの対立候補上三川での
発言です。

●なぜ、取り上げるかと言えば、二人の発言の底流に存在する、きわめて
問題な「選民」意識を感じるからです。この選民意識、あるいは「自分は別格」だと
思う一種の優越感(観)は、どうも自民党世襲政治家に共通する心理的な傾向
ではないかと感じるからです。

●麻生総理の問題発言は、25日の青年会議所関係者との会合で飛び出しました。
私も、かつては宇都宮JC(青年会議所)の会員でした。だからJCの気分もそれなりに理
解できます。また麻生さんが、JCの元会頭として現在に至るまで大きな影響力を
有していることも知っています。だから、おそらく仲間内の気安さの中で、リップ
サービス的な軽い失言をしたと、ご自身では思っているかもしれません。

『以前からの持論であり、同趣旨の発言は過去、何度も話しているし著作にも書いている。 いま「失言」と大きく取り上げるのは、政局狙いとしか思えない。』



●しかし、新聞で紹介された発言の内容を総合すると、麻生さんの発言には、
高齢者のおかれた複雑な環境に対する理解のかけらも感じられず、そのうえ、
高齢者の人間性をあまりにも無視した偏見は、許すことができないと感じます。
私などは、こんな発言をする方が、総理大臣であったという事実に、深い怒りを
覚えるとともに、こんな日本の政治の現状が本当になさけなくなってしまいます。
まさに怒りを通り越しての「悲しい暴言」だと思います。

『新聞で紹介されたものだけしか見ていないとは…。 後々まで残るメルマガだったら、もう少し発言の背景を読み取る努力をすべきではないか? 』



●麻生総理の高齢者発言は各紙を総合すると以下のようです。自民党は、選挙の
顔として麻生さんを選んだことに、いまさらながら大きな後悔をしているのでは
ないでしょうか。なお( )内は私の感想です。

『麻生陣営は、講演の録画・録音の全文を公開すべきじゃないかな、とか思う。 一部の切り貼りに対抗すべきであり、その上で判断できる材料を提供してほしい』


「 日本は65歳以上の人たちが元気。65歳以上の人たちで、働ける健康な人、いわ
ゆる介護を必要としない人は実に8割を超えている。
(この現状認識自体が誤りです)

『政府の平成21年版「高齢社会白書」の数字を見てみる。 http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2009/gaiyou/pdf/1s2s_1.pdf 
「我が国は平均寿命だけでなく、健康寿命(自立して健康に生活できる年齢)も世界で最も長いが、健康についての高齢者の意識をアメリカ、ドイツ、フランス及び韓国の4カ国と比較してみても、「健康である」と考えている者の割合は、日本が64.4%で最も高い結果となっている。なお、日本に次いで高いのはアメリカ(61.0%)で、以下、フランス(53.5%)、韓国(43.2%)、ドイツ(32.9%)の順となっている。」

どこあたりが誤りなのだろうか?』


 「元気な高齢者をいかに使うか。」
(「使う」という人を完全に見下した表現は問題です。とても怖いものを感じます。)

『経営者目線の表現だと感じるがなぁ。 老人を搾取するように感じているのだろうか? 若者やニート相手ならばいいのかな?』


「この人たちは皆さんと違い働くことしか才能がないと思ってください。働くというこ
とに絶対の能力がある。」
(高齢者が働くことの意味を「才能」「能力」ととらえているようです。私は、高齢者
になっても働かざるを得ない環境こそ問題だと思います。それは「能力」「才能」とは
、まったく次元が違う話です。)

『ここあたり、見ている高齢者層が違う。
高齢者世帯間の所得格差は大きいが、金融資産保有割合を見ると5割強を60歳以上が占めている。

一方で「暮らし向きについて、苦しいと感じている高齢者は3割弱」(平成21年版高齢社会白書より)
どちらに主眼をおいているかの差だろう。』


「80過ぎて遊びを覚えても遅い。遊びを覚えるなら青年会議所の間ぐらい。そのころ
から訓練しとかないと。60過ぎて、80過ぎて手習いなんて遅い。」
(「遊び」と「訓練」と「手習い」の脈絡がめちゃくちゃです。高齢者が、家族を支え
るために働かざるを得ない、そしてその癒しを求めるための「遊び」など、まったく
念頭においていない。恐ろしい高齢者差別です。)

『 ”民主党鳩山由紀夫代表は25日午後、大阪府柏原市での街頭演説で「私の母は、85(歳)を過ぎてから韓流スターに会いたいとハングルを勉強し始めた。人生はまさにいろいろある。働くしか才能がないという言い方はどう考えてもおかしい」と非難。”
鳩山代表発言の、ここだけを切り取ると、「どっちもどっち」という感じになってしまう罠が。
仕事観の違いかな。 「飯を食うための苦役」と「社会と繋がる生き甲斐」との差。』


「働ける才能をもっと使い、その人たちが働けるようになれば、その人たちは納税者に
なる。税金を受け取る方ではない。行って来いで、日本の社会保障は違ったものになる
。どうしてそういう発想にならんのか。」
(高齢者は働けて納税できる。だから、社会保障の対象にする必要はない。麻生さんの
発言は、究極のところ、高齢者への福祉の観点を否定しています。)

『「究極のところ」というあたりから、論理が飛躍してないか?』


「明るい高齢化社会、活力ある高齢化社会。これが日本の目指す方向だ。活力ある高齢
化社会の創造に成功したら、世界中、日本を見習う。」
(高齢者の置かれた立場への無理解。とても見習う気にはならないでしょう。)
『見習うかどうかはさておき、先進国も急速な高齢化が進んでいるので、日本の政策は他人ごとじゃなく注目されているだろう。 中国の年齢別人口比率も、かなり歪んでいるし。』


(後略)
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なんか、書いてみたら えらい不毛な気分。
ゆりかごから墓場まで」でいけるなら、そりゃいいだろうけどさ…