【書評】東大式絶対情報学 伊東 乾 (著)

出版社 / 著者からの内容紹介だと、何が書いてあるのかすぐには判別できないと思う。
絶対情報感とは???


絶対音感をもじって「絶対情報感」という造語をタイトルにしたものらしい。
まず最初にタッチタイピングの重要性が説かれ、その為の準備運動が写真付きで詳しく解説されている。 つまりキーボードを楽器のように操れるように訓練、体で習得しろ、ということから、カリキュラムが始まる。
楽家っぽい発想なのかも。 


膨大な情報の洪水の中で、素早く分析し判断する知的反射神経を鍛え、効率的に情報発信するかについてのノウハウ本だ。
音読・黙読・視読・熟読とか、プレゼンテーションのやり方、メールの活用法、ビデオの前で発表するときの心構えなどなど、具体的というか、まぁ手引き書というか教本のような感じ。


人間の能力から、情報は7つの袋に分類し考えるといい。だからパワーポイントの1つの画面に7±2の5〜9行だと聴衆にとってちょうどいいとか。
そういえば、さよなら、サイレント・ネイビー ――地下鉄に乗った同級生 でも問いは7つだったな。

 『 明らかにしたい問い

  1 なぜ、人々はオウムや麻原彰晃に心酔したのか?
  2 なぜ、若者はオウムでの「修行」に惹かれたのか?
  3 なぜ、未来あるエリート科学者の卵が、あんな荒唐無稽な教団に走ってしまったのか?
  4 マインドコントロールされて犯行に及んだとき実行者はどういう意識だったのか?
  5 人々をオウムに駆り立てた本質的エネルギー源は何か?
  6 宗教と科学の間の明確な矛盾を彼らはどう考えていたのか?
  7 再発防止のために最初にしなければならないことは何か?


最近流行の「脳を鍛える」「活性化」するというのから、一歩踏み込んでいるのかな?
「体を変えれば、脳も変わる。 その逆もある」という感じの身体観を強調しているという印象。
タッチタイピングとか、速読の自主ゼミで知恵蔵等の用語集を1,2時間で通読する訓練とか、音読などの「修行」が紹介されている。


残虐映像を見たとき脳が不活性化するという話は、これが初出かな? (2006年3月発行)
実際の写真が載っています。

この機器を使っている模様。
島津製作所 近赤外光イメージング装置「NIRStation」  http://www.med.shimadzu.co.jp/products/om/01.html

近赤外分光法(NIRS : near-infrared spectroscopy)を用いて、脳表面の酸素状態を捉え、視覚、聴覚、運動などの部位特定や、その活動状態をリアルタイムでカラー表示します。新生児・小児臨床評価、リハビリの効果測定、脳機能障害臨床評価などの幅広い分野で研究をサポートします。

ここが参考になった。
生かして生かされて生きる:そのいち、番外編 http://blog.goo.ne.jp/mirei-2005/e/879d212daa11bba36b35703bf4eb7b43


著者の同級生というか、生徒である東大生の先輩が地下鉄でサリンを撒いた話も出てくる。 それを繰り返さないために、このカリキュラムを考えたということらしい。 
とはいえ、倫理的なことは、特に印象には残らなかったな。

【目次】

00 絶対情報間―知的反射神経トレーニン

 変わる情報リテラシー
 基礎 情報を3つの人称から感知する
 メカニズム 「情報教育カリキュラム」は身に付きにくい?
 展開 「東大式」絶対情報学の全体像

01 手と目と脳で加速する―タッチタイプ初歩と加速学習の本質 

 意識的な自己コントロールを!
 基礎 絶対情報感=アブソリュート・センス・オブ・インフォメーション ほか

02 手と目と脳でもっと加速する―WEB速読初歩とインセンティブの重要性

 WEB速読が時間を劇的に節約する
 夏目漱石の2年間2万冊!?
 音読・黙読・視読・熟読 ほか

03 使えない情報を使えるようにする―知識俯瞰とタイミング

 インフォメーションとインテリジェンス
 インフォメーション・アイで見る ほか

04 1通のメールが明暗を分ける

05 マジックナンバー7±2―プレゼンテーションとメディア収録

06 まず褒め、次に対案を―反射的アプリケーションのテクニック

07 予防公衆情報衛生―ブロードバンドの光と闇

08 ネットワークコラボレーション―内発的駆動力があるグループワーク

09 オリジナリティの3つのルール

10 知識情報の「遺伝子組み換え」―達成度チェックとアクションプラン

出版社 / 著者からの内容紹介
競争社会を勝ち残るための「IT知」の技法
絶対情報感を身につけろ!
東京大学全学必修・文理共通科目「情報」の最先端カリキュラムを初公開!情報の達人になる秘訣を完全伝授
絶対情報感とは???3つの「人称」の視点で見直す情報感覚
●第一人称性情報感
情報対象の全体像へ開かれた強い予感と確信、実行の感覚
●第二人称性情報感
多様な情報通信過程での主客関係の自在な転倒感覚
●第三人称性情報感
情報過程を遂行する自分自身を含む全体像の客観的把握の感覚
全ての言語は、「私」「あなた」「それ以外」の主語を持っています。「絶対情報感」は、必要に応じてこれら3つの立場で情報を見直す、知的反射神経なのです。
21世紀初頭の今日、わたしたちは膨大な情報の洪水の中で、日々の生活を営んでいます。一方でコンピュータやネットワーク環境は毎日のように「高速化」します。しかし、ユーザである私たち人間は、必ずしもその加速に追いついているとは言えません。「IT知」の技法を駆使して、めまぐるしく変化するネットワーク上のおびただしい情報の渦をものともせず、常にクリエイティブな信頼感を周囲に持ってもらえるようになったとき、情報の荒波はサーファー垂涎のラッキーウェイブに変わるでしょう。??<本文より>


内容(「BOOK」データベースより)
競争社会を勝ち取るための「IT知」の技法。絶対情報感を身につけろ!東京大学全学必修・文理共通科目「情報」の最先端カリキュラムを初公開!情報の達人になる秘訣を完全伝授。

東大式 絶対情報学

東大式 絶対情報学

【追記】
伊東氏の身体観というか教育観については、以下も参考にした

http://idaten.c.u-tokyo.ac.jp/dtr/cong/H18-1kensyuu%20report2.htm
全国大学体育連合関東支部平成18年度第1回研修会報告(2)
地球持続戦略研究イニシアティブ ヒューマン・サステナビリティ・プロジェクト
こども平和タスクフォース・一般表現学会設立準備委員会

特別講演
「存在を消す身体 ――― 能楽ワキ方から見る生命・世界」
ワキ方下掛寳生流・人間国宝 寳生 閑
司会:東京大学大学院情報学科助教授 伊東 乾

また司会者から「病気になった」という時に、お医者さんに診てもらうという冷静な視点も非常に大事ですが、お医者さんが何か処方してくれれば全て病が癒えるかというと心の問題までは必ずしも解決しない。ところが心の問題を解決する時に、心だ心だと思っているとそれで解決するかというとそうもない。では体を動かすことによって、例えばお稽古をすることによって克服されるとかの方法は能の世界ではありましたかとの問いに対し、肉体はまず鍛えるというか、そういうことから一つの人間を作っていく世界ではあったと答えられた。

さらに、司会者と寳生先生との問答の中で、能を教えるための教育方法では、何回も何回も教えて納得がいく演技ができたとき、それを忘れるなと言ってぶん殴る。そうすると確かに忘れない。最初からぶん殴るのではなくて出来たところでぶん殴るっていうのはすごく良い教育方法で、今も相変わらず実践している。

逆の場合で何回教えても間違えるような場合は、三度間違えればぶん殴る。そうすると忘れない。これは暴力と言うよりはしつけの一環なわけだが、今の時代には通じない側面を持っていることは確かである。その一方で子供に対しては、最初は面白おかしくやらせ、能は楽しいものなんだよと思わせることも大切であると。