代理出産と水子とスピリチュアル

代理出産については「産む機械」とか、商業化問題、出生児や依頼夫婦、代理母などに医学的、社会的などの論点から言及する人が多い。 宗教とか民俗学絡めて論じている人は、意外と少ないという印象が有る。 
ちょっと方向を変えて、民俗学っぽい方向から考えてみた。


代理出産については、1月17日報道では日本学術会議が1月中に素案をまとめる予定だったようだ。しかし各方面から圧力でもあったのかな? 結論は3月末まで持ち越しになった。


素案リークの翌日2008年1月18日に、共同通信配信記事が地方紙に一斉に載った

「選択肢なくさないで」 国内で代理出産の女性


 代理出産をめぐる日本学術会議の議論が大詰めを迎える中、国内で実施された代理出産で子供をもうけた関東地方の女性が、18日までに共同通信の取材に応じ「子宮がなく、子供を産めない人の最後の選択肢をなくさないで」と訴えた。


 国内の代理出産の当事者がインタビューに応じたのは極めて異例。女性は「賛否の分かれる問題だが、代理出産の子供が無事に育ち家族が幸せに暮らしていることも知ってほしい」としている。


 日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」は同日会合を開き「代理出産を新法で禁止する」との素案を議論した。

 女性は過去に、子宮外妊娠のため流産、大量出血し子宮の摘出手術も受けた。命は取り留めたが「絶望のため人生が終わったような気がした」という。一時はうつ状態となり何をする気力もわかなかった。
(共同)

あらら、この人も…と思ったな。 向井亜紀もそうだけど、代理出産を巡る話には流産や中絶の話が目立つ。
代理母ドットコムの代理母依頼者の「経験者の手記」も同趣旨だ。 http://www.ne.jp/asahi/time/saman/index.htm#mokuji

向井亜紀の話はドラマ化もされてるから、ロールモデルになっているのかな? 代理母推進派が戦略的に「流産」の話を取り上げているのかな、などとも思うわけだが。


これが、いわゆる日本人には一番うけて、泣けて、同情を得られる話なんだなぁ、と改めて再確認できたかも。*1



オーラの泉』2007年4月28日(土)のゴールデンタイム移動第二弾のゲストは向井亜紀だった。 年末年始の特番で再編集されて、放映されていた。
向井は以前から江原啓之と親交があり、いろいろアドバイスだか霊視だかされていたそうだ。


江原は生まれなかった胎児ととも交流できるらしい。 
生まれなかった胎児が「今度は新しい子供を連れて帰ってくるから、悲しまないで」と言っていたそうだ。 その言葉通り、向井は双子を得ることになった、ということだそうで…


なんていうか…、ついに水子が語り出す時代になったか…、というか水子の代弁者がTVに出て来くる時代になったのだなぁ。


水子供養の研究をまとめたサイトで、水子がどうゆう風に語られてきたかまとめられている。

誕生前の「死」?  現代日本水子供養
http://www.ne.jp/asahi/time/saman/index.htm#mokuji

大衆週刊誌の中の取り上げられ方の変化は、次のようにまとめられています。

例えば、民俗学者森栗茂一は、水子供養記事の論調の変化を次のように要約する。「水子供養記事は、中絶論議が議論を究める1974年に始まり、中絶記事の第二期である1978〜1983年に最盛期をむかえる。中絶問題の論議が、中絶の日常化のなかで記事的魅力を失い(消費され)、よりドラマチックな「水子物語」が記事になっていくのである。その変化は80年頃に観光化し、85年頃からオカルト化してくる」。
http://www.ne.jp/asahi/time/saman/jikikubunn.htm

1960年代後半から,十代の性の乱れとセットで中絶問題が取り上げられるようになった。*2 それ以前は,家族計画というか3人目4人目を堕ろす既婚女性の中絶が多かったためか、あんまり表だって話題にする話ではなかったようだ。
85年頃からオカルト化」というのは、「水子のたたり」のこと。


199尾年代から現在に至るまでは、どうなっているかなぁ…

妊娠小説 (ちくま文庫)

妊娠小説 (ちくま文庫)

これを読みかえしたほうがいいかな。
ちなみに90年代には出産本がブームになった。 1993年には「たまごくらぶ」創刊。 いまではすっかり定着したなぁ。


それはさておき、代理出産が語られる文脈に、「流産、そして子宮摘出手術」がかなりの割合で頻出するのが気になる。
不妊治療をしたが、何度も流産を繰り返した」というバリエーションも有るな。
これって向井亜紀の影響だけとは思えないぞ。



仮説として

  • 代理出産を求める情熱は、かつて水子供養をしていた情念が、時代と共に変化したものではないか? 代理出産とは、水子を現世に呼ぶ行為なのではないか?

などど提示してみたくなった。



この件については他のblogであれこれ書いていたけれど、はてなで書くことにする。
http://londonbridge.blog.shinobi.jp/Category/11/

*1:「恋空」も流産話で泣かせる。 主人公に経済力があったら、相手との子供を、どんな手段を使ってでも作ろうとしかねない気がする。

*2:石原慎太郎の「太陽の季節」がその先駆かも

代理出産に関係するかもしれない研究など

子宮移植が研究されていたりする。

最近ネイチャー誌のニュースレターにニューヨークの研究グループが5・6年前から子宮移植手術の動物実験を重ね実行していると伝えている

心臓、肝臓、腎臓、顔の移植に次ぐものでまだ不成功に終わっている。
子宮全摘をされ妊娠分娩を切望する患者の為に死者からの提供を受けるもので実際に7ヶ月まで子宮移植に成功したが血栓などの問題で全摘に至っている。仮に成功しても一生発癌性が強いとされる免疫療法剤を投与し続けなければならず、それを避けるため第一子をもうけた後即子宮全摘を行い薬害のリスクを断つと言う。あと5・6年先に実現の可能性をみている。子宮全摘をする一方で子宮移植の努力は最終治療として全摘で終えている不本意さを示している。彼等は子宮全摘に対して卵巣を残すからホルモンがあり女性に代わりはないと言う。子宮の血管に殆ど依存している卵巣は子宮をとればどうなるかという事を説明しない。

http://www.hiroomc.com/hozon/data2/comment.html


人工中絶された女の胎児の卵巣から卵細胞を取り出して培養する可能性も,無いわけではない。

赤ん坊の実の母親が5歳の女の子だったり、生まれざる胎児だったりする時代が来る? ― 未成熟卵細胞の試験管内培養に成功
http://rate.livedoor.biz/archives/50393905.html


Doctors freeze eggs of girls, 5
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/science/article2010114.ece


ネズミ胚にヒト細胞を入れる実験に関する議論

Debate over human-mouse mix
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/2523217.stm

その延長線上に、ヒトの精子を作り出すネズミとヒトの卵子を作り出すネズミが出来るのではないか? そいつらが交尾をする可能性もあるのでは? という記事も有ったはずだが探しきれず。

未受精卵から治療用幹細胞を造る研究とか、死亡胎児を医療に利用とかいう研究も有ったな。



幹細胞で男性の不妊を治療する話

Treating male infertility with stem cells
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2007-03/ajop-tmi030107.php

ES細胞精子から子ども誕生。 マウスで成功してた

'Lab-made sperm' fertility hope
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/5154026.stm

精子をヒト骨髄から作るという話

 Bone stem cells turned into primitive sperm cells
http://www.newscientist.com/article/dn11601-bone-stem-cells-turned-into-primitive-sperm-cells.html

「女性の精子」なんて可能性もあるかも、とのこと




なんとなく西行さんの話を思い出した。

西行高野の奥に於いて人を造る事
http://londonbridge.blog.shinobi.jp/Entry/387/