リトマス紙となった国籍法改正騒動

今回の騒動は、いろんな意味で興味深い。
いろんな人が言及していたわけだが、それぞれに重視する論点の違いなどが見えてきた騒動でもあった。
とりあえず5つの項目についての雑感

  • 法律に対する感覚 
  • 日本についてのイメージ (歴史観など)
  • 外国人に対するイメージ 
  • 世界情勢についての目線
  • DNA鑑定

法律に対する感覚

賛成派と反対派でかなりの感覚の違いが見えたような気がする。
家族法のあれこれ、戸籍とか認知、扶養、生活保護なども関連してくる問題があるのだが、そこあたりの知識と経験の差が出やすかった部分かも。


「闇の組織が法律の穴をついて暗躍するのでは?」という話は、法律のしくみや現場の事を知らない話としか見えない。


この法律のセンスということで、一番驚いたのは城内実・元衆院議員のblogだった。

日本国籍がある親は、子供を虐待しても文句は言えない」という前提がむちゃくちゃだ。

日本についてのイメージ

日本の伝統、という話もいろいろ出てきた。
どんな日本の未来像を描くかも、人それぞれ。

弥生・縄文のことから書き出す人が、結構いたな。
DNA鑑定と絡めた日本の家族制度の歴史についての考察が、改正賛成派に多かったかも。(自分を含めて)


あと「移民が大勢日本を目指してくる」ということが自明の前提となっていることにも違和感。
こんな記事も有る。

データに関しては、以下のリンク先に結構集まっているかな。

『国籍法改正案を検証する会合』に賛同する議員の会が出した、「想定される偽装認知」の例も面白い。

  • 二、国際テロリスト及びその子孫を認知することも可能になる。仮に、正規の日本国籍を取得した「日本人」がテロ事件を起こした時に損なう国の名誉は甚大である。(国際的にテロ国家と批判される)

つまりは、非国民には素晴らしい日本国籍をやるな! という話だったのかもしれない。

外国人に対するイメージ

「数万人単位で国籍を認めるかもしれない」というのは、そりゃぁ衝撃的だろうが、その人数に驚きパニックになっているとしか思えない。

日本人男性が積もり積もった「数万人」を作り出したことと、その実情に対してほとんど何の考察もされていないのが、ひじょうに不愉快だった。*2


ともかくも「中国人」の話ばかりで辟易したな。
嫌韓が目立ちだしたのは、日韓共催ワールドカップのころというのが定説だろうが、こういった嫌中国の言説が広まったのはいつ頃だろうか?
初期は「反中共」だったという印象がある。 外国人犯罪と中国国内の反日暴動・サッカーへのブーイングが目立ち始めた頃なんだろうか?



それにしても、なんとなく思うのだが、「中国人の日本征服」説ってのはユダヤ人陰謀説と禍黄論の焼き直しじゃないのか??

世界情勢についての目線

外国の法律の一部だけを引用して論じてる人も多かった。 背景などが無視されちゃっている感じ。
あと、この動きは海外からどう見られているのだろうか、若干気になる。


欧米とかアジアだと、外国人移民とか華僑は皮膚感覚というか実態として有るわけなんだが、日本の場合は不安先行なのではないか。
日本にも外国人街がいくつか有るけれど、その地域から反外国人感情が噴出という事ではない感じ。
何十万人単位の移民とか、闇の組織とかのバーチャルな情報が一人歩きしているのじゃないかな。


DNA鑑定

私が最初に引っかかったのがDNA鑑定問題。
日本人の家族観とか、科学に対する態度ってのが気になった。

*1:【記事より】 中国人が留学先を選ぶ時代になった。一方で、日本への憧れは以前のように強いものではなくなった。かつて上海人はソニー、松下など「日本ブランド」への熱狂的な“信者”であったが、そんな日本熱も2000年以降、中国メーカーの技術力の向上とともに次第に薄れた。日本企業での就職も憧れだったが、次第に底が見えてくるようになる。待遇は年功序列、欧米系企業ほど厚遇されるわけでもなく、主要ポストは相変わらず日本人によって占められる状態。入社後に失望を感じ、欧米系企業に転職する中国人従業員も少なくない。しかも、とりわけ国際競争の激しい上海市場で落伍する日本企業の現実を目の当たりにするにつれ、優秀な上海人あるいは中国人は「日本企業はすばらしい」という評価を無条件には与えなくなった。

*2:一二月一三日のエントリーは、最初は「無視されるフィリピーナ達」というタイトルで書いていたんだけど、インパクト重視も有ってタイトル変更。