姉妹間で代理出産した話

国内第一号、第二号の代理出産した人たちを巡る言葉。 コピペばっかりで、長い……


代理出産をしたいという女性の手紙

 私は大川栄子(仮名)といいます。
(中略)私には、○才上の姉がおりますが、結婚し、7年目にして平成○年○月にやっとさずかった子を出産する予定でした。それが、もうすぐ10ヶ月目に入るところで出血し、(中略)子宮の摘出を受けました。


 姉は元気になりましたが、子どもを亡くした悲しみは、私の子どもを抱くことができないほど大っきなものです。(中略)そうしていたら、新聞に(載っていた根津院長の)”借り腹”要望に対応、という言葉に、どうしても先生にお話を、お願いをしたく、手紙を書きました。


 先生の患者さんの中に私たちもいれてください。(中略)私たちは、社会が少子化を取りあげるより先に、子供をたくさん産みたくても産むことのできない人々のための法をなぜかえないのかと、手も足もだすことのできない悲しみでいっぱいでした。先生が神様のように天使のように思えてなりません。私たちには、小さな、でもとっても強い光がみえてきたように思えます。


 先生、頑張ってください。私たちを助けてください。家族で心の底から幸せの笑いをとりもどしたいのです。(中略)私に姉夫婦の子供を産ませてください。先生にはけっしてご迷惑をおかけしません。借り腹をして子供をさずかって、誰に迷惑をかけるというのでしょうか。そこには幸せな家族の思い、そして手をかしてあげられた幸せな私の思いがあるだけです。言葉にしてはうまく伝えられませんが、先生、日本中の悩みを持った女性のため、明るい21世紀を迎えさせて下さい。


 手術のうけられる日をお腹をあけて、健康なからだでまっています。ぜひよろしくお願い致します。

代理出産バッシング」騒動を経て、

 朝日新聞は、20日付朝刊の1面で、「事後ケア不十分」という見出しのもと、「代理母になった妹夫婦や姉夫婦と根津院長はその後、疎遠になっており、家族関係もぎくしゃくしている」などと断定した記事を掲載している。この記事を読む限りでは、患者は根津院長に対して不信感を抱いて離れていったように受け取れる。しかし、「不十分」なのは、朝日の記者の取材の方であろう。出産後、根津院長あてに送られてきた栄子さんの手紙を読めば、それがよくわかる。

根津先生お久しぶりです。(中略)あれから1年が経ちました。そして私たちは、最高の宝物を手にすることができました。
少し小さめですが、とても元気な子を無事出産することができました。


当然のことですが、義兄にとてもよく似た子が、私のお腹から産まれてきた瞬間、何とも言いようのない不思議な思いを感じ、母としての愛しさとちがい、やっと大きな仕事を終えたという安堵感で涙が止まりませんでした。


先生、言葉足らずですが、本当にありがとうございました。最近、借り腹出産について芸能ニュースでも報道されることが多く続き、厚生省では3年以内に刑事罰を科して規制していくと聞きました。ほんの少し、本当に少しですが、”ドキッ”としたりすることがあります。人に話をするのに”上手に言わなきゃ”って思ってしまう私がいたりします。


でも、妊娠出産という神秘を私のお腹ですごし、誕生してきた命です。力強く脈を打って生きていこうとしている命が生まれてきたことは、すばらしいことだと信じています。


いつの日か、10年20年後でも、必ず国内において、すべての女性が安心して治療を受けられる日がくると信じています。だから私は、いつの日も胸を張っていようと思います。


いま、姉夫婦、家族はとても幸せに笑うことができました。私も何よりこの日を望んでいました。(中略)いつの日か、心からの笑顔で先生にお会いしたいと思います。
根津先生、本当にありがとうございました。言葉ではすべてを伝えることはできませんが、本当にありがとうございました。

 心をこめて……

この記事を書いた岩上安身は、その後フジテレビの「とくダネ!」で根津院長が手がけた2例目の代理出産のケースを取材している。 今度は、妹夫婦の子供を姉が代理出産したケース。


その番組を、厚生科学審議会生殖補助医療部会で渡辺久子が批判。

 例えば、ここに「御意見募集で寄せられた意見」の3ページに代理懐胎3月6日フジテレビ(とくダネ!)という記事があります。そのテレビのビデオをたまたま御親切にどなたかがお送りくださって私見たのですね。それを見て本当に仰天したのですけれども、国民が茶の間でこういう現象をすごく浅いレベルで論じている。


この番組に出演された家族内でおきたことは家族病理の1つの典型例として、もし国際学会で精神分析学会や家族学会で出せば問題になると思います。この「とくダネ」に出ていた女性が一番必要としているのは、長期的な深い精神的なサポートであるという専門家の意見になると思います。


この女性は我が子が順調におなかの中で大きくなっていたのにある日子宮内の胎児死亡を経験した。そしてその後子宮全嫡になったのです。この方にまず必要なのはこの理不尽な運命に対する恨みを長期的に時間をかけて乗り越えていくというプロセスです。それが第一医療選択なのですね。第一医療選択で産婦人科医が勧めなければいけないのは、こういう運命の仕打ちを生き延びてきたことに対する自分自身への振り返りなんですね。


それを代理懐胎という形で置き換え、それを美談にしていくという日本の状況を見たときに、私は日本の心理学者や大学の心理学科は何をやっているのだと、本当にお恥ずかしいと思いましたね。


 これは結局は、自分がおなかの中で育てた赤ん坊を奪われた体験を、義理の兄嫁にも同じように味あわせないと、あんたは兄弟でないよという無意識の怨念を向けているのです。


その怨念を向けられた兄嫁は、自分がすでに産んだ子どもを自分の親戚の義理の妹の怨念から守るために、いわば無意識の母性本能からあえて同じ体験をかってでているのです。そして自分のおなかの中で大きくなって出産した子をぱっと差し上げているわけですね。これは人身御供だと思うのですね。


 こういうことは、私ども専門家はわかりますけれども、一般の方はわからない。つまり日本の心理療法のレベルは、まだそれくらいであって、これはむしろ文学者とか詩人とか、あるいは常識豊かな方はわかるけれども、日本の大学で教えているレベルの心理学ではわからないのだと思ったときに、まだまだ日本はカウンセリングなどできないと思いました。


またカウンセリングの適応であることの判断のできない産婦人科医が、生殖補助医療という形で置き換えているのがもし生殖補助医療だとしたら、私は断乎反対です。つまり産婦人科医の方々が産む性である女性の自分の胎内の命が奪われたときの怨念の深さを簡単に生殖補助医療で置き換える問題に気づかないでやっているのであれば、生殖補助医療全体をもう一度勉強し直す必要があると思いました。


申し訳ありませんけれども、生殖補助医療のライセンスを持つ方は、少なくとも周産期精神医学と女性心理をもう一度勉強見し直すべきだと思いました。


 普通の国民の生活や家族関係が、こういった中途半端なものに汚染されていくことに危惧を憶えます。もっと根源的に、例えばその兄嫁の人生が深いところでトラウマを受けた可能性があります。それは二度と口に出してこの体験にまつわる本音が言えないというトラウマですね。


 しかもその兄嫁のお子さんが赤ちゃんのときから、そういう母を見ていくというサディズムですよ。サドマゾの関係ですね。弟嫁が子宮の中の赤ちゃんを奪われたという被害者としての体験を今度はサディスティックに兄嫁に、無意識に強いて、そして兄嫁がそこにマゾヒストになることによってのみ家族が円満になっていくという、これは私の読みなので、ちょっと強調して申し上げますけど、これはもっと痛ましいことであって、それを美談としてやっていくというのは考えられない。


 たまたまビデオをきのう、きょう見たのですけれども、つまり次の世代が巻き込まれている。つまり胚の提供の場合も提供した御夫婦の姉妹が必ずこの問題に巻き込まれる。それは私たちは死んでいなくなるけれども、私たちが勝手にやったことの結果を次のジェネレーションの見ず知らずの家族が負っていくことになるわけでやはりもっと真剣に考えるべきだと思ったのです。そういう意味では国家が入らないと、国が責任を持たないと、これは誰も責任を持たないで命をつくるとか、命をいろいろと選択するとかということになっていきかねないと私は思ったのです。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/txt/s0326-1.txt
平成15年3月26日第26回 厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録より

それに対して岩上安身と野田聖子が猛反発。(インタビュアー「−−」が岩上安身です。)

野田 「諏訪マタニティークリニックの根津八紘院長が手がけた国内第一号の代理出産は、妹さんがお姉さんに代わって産んであげたというケースでしたけれど、これは姉妹間の強い絆があったからこそ、できたんだと思います。


代理出産だけでなく、精子卵子・胚の提供もそうですが、ドナーになることを引き受けようという人は、兄弟や姉妹や親子など、身内の方であることの方が多いと思うのです。それを許さないというのは、事実上の、障壁を設けているということですよ」

(中略)

−−代理出産に反対の報告書を出した医療部会の委員の中には、名誉毀損かつ人権侵害ものの暴言を吐いている委員もいます。


根津院長が手がけた2例目の代理出産のケースを、私自身が取材し、『とくダネ!』という情報番組で放映しました。不妊の悩み、代理出産へのとまどいと決意について、依頼した夫婦と、引き受けた義理の姉に当たる女性にインタビューし、当事者としての肉声を伝えたのですが、この番組を見た部会の委員の一人、慶応大学医学部の渡辺久子専任講師(精神保健)は、部会の会議の席上、この当事者達を指して『家族病理の一つの典型として、もし国際学会で精神分析学会や家族学会で出せば問題になる』と発言し、直接、当事者と会ってもいないのに、勝手に『分析』して、『診断』を下している。


精神科の医師として許されることなのかどうか。しかも、その自己流の『診断』を公開してしまっている。守秘義務があるはずの医師としてのモラルが問われます。


野田 「オープンにしているというのは、ネット上で公開されているのですか? どういう内容なのですか?」


−−
(略)
私は、依頼した夫婦には6時間、引き受けた義理の姉にも3時間のインタビューを行っています。テレビのオンエアで使ったのは、そのうちほんの数分にすぎません。


そこには、たしかに感情が高ぶって、涙を流すシーンが含まれていますが、そうしたわずかな場面から、憶測だけで『家族病理』とまで断定しているのです。代理出産の経験者でなくても、不妊症の患者さんが、自分の体験を話す時は、感情的になるのがむしろ普通のことで、涙を流しもするし、自分の運命を呪うような嘆きを口にするものです。


それだけで、ここまで言うのか、不妊当事者をここまで傷つけるのかと、怖ろしさと怒りがわいてきます。


野田 「(はぁーっと嘆息)もう、言葉もないですね。信じられない。不妊患者の苦しみなど、まったくわかっていないですね。私だって、自分が不妊と知ってから今まで、何回、涙を流したかわかりませんよ。その医者から見ると、きっと私も精神科の患者なんでしょうね。私にも精神科の治療が必要である、と。そういう医者と何を話し合っても無駄という気がします」


−−渡辺氏は『こういうことは、私ども専門家はわかりますけれども、一般の方はわからない』などと、得々と語っています。思い上がりもはなはだしい。


わずかな時間のインタビューを見ただけで、精神科医ならば人の心のすべてをわかるとでも言うのでしょうか。非常に危険だと思います。彼女はさらに暴走して、この義理の姉妹関係をSMとまで表現しています。


『その兄嫁のお子さんが赤ちゃんのときから、そういう母を見ていくというサディズムですよ。サドマゾの関係ですね。弟嫁が子宮の中の赤ちゃんを奪われたという被害者としての体験を今度はサディスティックに兄嫁に、無意識に強いて、そして兄嫁がそこにマゾヒストになることによって、無意識に強いて、そして兄嫁がそこにマゾヒストになることによってのみ家族が円満になっていくという、これは私の読みなので、ちょっと強調して申し上げますけど』などと語っている。


好き勝手に『読み』をして、『家蔵病理のSM物語』を1人でつくり上げ、公表する権利が、この人にあるのでしょうか。そのあげく、『国が責任を持たないと、これは誰も責任を持たないで命をつくるとか、命をいろいろ選択するとかということになっていきかねないと私は思ったのです』と、愕然とするしかない結論につなげています。


子供をつくることに、国家が介入することを積極的に提唱しているのです。不妊当事者とその関係者に対し、直接会って診断もせずに、サドだのマゾだのと侮辱的なレッテルを張り、そのあげく、生殖の国家統制を公然と唱える。こんな暴挙が許されていいのでしょうか? しかも他の委員の誰一人として、彼女のこの暴言に反論せず、沈黙によって事実上の承認を与えている。これが厚労省の部会の議論の実態であり、それが白昼堂々、ネット上で公開されていて、誰も異議を唱えないというのは、異様な光景です。


野田 「異議を唱えるのが、馬鹿馬鹿しい、不毛だということなんじゃないでしょうか(苦笑)、どうしようもないですね。次は私を精神科の患者として診断してくださいと、その委員に言っておいてください。


しかしこうした話を聞くと、不妊症の患者は、不妊という事実だけでなく、こうした周囲の無理解や偏見で二重、三重に苦しめられているという現状がよくわかります。


過去の歴史を振り返ると、多くの女性が不妊症に苦しめられ、泣かされてきたわけです。不妊治療の進歩によって、そうした悲劇から救われる女性の数が増えてきた。あきらめずに、幸せを求めていいのだと、勇気づけられてきたのです。そうした不妊当事者の思いを踏みにじることがあってはならないでしょう。


しかし、まだまだですね。不妊症患者への偏見が完全に払拭される日が来るのは」


野田聖子は「カウンセリング」と「精神科の患者の治療」というのを、ごちゃ混ぜにしてるようだな。
「カウンセリングを受ける=基地外認定」と考えているのかな。


ちなみに渡辺久子って、2000年に「母子臨床と世代間伝達」って本を書いてる人だった
出版社のサイト http://kongoshuppan.co.jp/dm/0639.html

母子臨床と世代間伝達

母子臨床と世代間伝達



参考として
「AIDで生まれた方たちからのメッセージ」 http://www.hc.keio.ac.jp/aid/message.html 
とか
厚生科学審議会生殖補助医療部会の参考資料「御意見募集で寄せられた意見」http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/04/s0410-3b.html
の2つめ3つめを【合わせて読みたい】かも